やさしい税務会計ニュース
文書作成日:2025/03/11
会社が負担した従業員の資格取得費用の損金算入時期

[相談]

 私は、訪問看護ステーションなどの医療・福祉系事業所を複数運営している会社で経理を担当しています。
 このたび、当社では、昨今の人材不足により看護師の確保が急務となったことから、従業員の中で看護師資格取得を希望する者に対し、看護師資格取得に要する費用(看護学校の学費等)の支援制度を始めることとなりました。
 制度導入にあたっては資格取得支援規程を定め、従業員と金銭消費貸借契約書を取り交わした上で当社がいったんその全額を支払い、従業員が看護師資格取得後1年以上経過した時点で当社に在職している場合には、その全額の返済を免除することとしております(在籍要件を満たさずに退職した場合には、退職時に全額を返済してもらうこととなっています)。
 そこでお聞きしたいのですが、法人税法上、上記の資格取得費用は、当社の各事業年度の所得の金額の計算上、当社が最初に資格取得費用を支払った日の属する事業年度の損金の額に算入されると考えてよろしいでしょうか。教えてください。

[回答]

 ご相談の資格取得費用は、貴社が最初にその費用を支払った日の属する事業年度の損金の額に算入することはできず、従業員が勤務要件を満たしてその全額の返済が免除された日の属する事業年度の損金の額に算入することになるものと考えられます。詳細は下記解説をご参照ください。

[解説]

 法人税法では、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上その事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とすると定められています。

@その事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額
A上記@に掲げるもののほか、その事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用でその事業年度終了の日までに債務の確定をしないものを除きます)の額
Bその事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの

 上記@の収益に係る売上原価等の額とは、収益獲得のために費消された財貨及び役務の提供の対価のうち、収益に直接かつ個別的に関連した費用の額(費消された財貨及び役務の提供の対価の額)が該当し、上記Aの販売費、一般管理費その他の費用の額とは、収益に個別的には関連しないものの、その事業年度の収益獲得のために費消された財貨及び役務の対価をいうものであり、いわゆる期間損益に属する費用の額が該当し、上記Bの損失の額とは、偶発的ないしは特殊の損失をいい、災害、盗難等通常の事業活動とは無関係な偶発的要因により発生する資産の減少の額が該当すると解されています。

 また、企業会計上、販売費、一般管理費等については、いわゆる期間対応により発生した事業年度で計上されることになりますが、法人税法上の損金の額とされるためには、上記Aのとおり、原則として、「債務の確定」が要件となります。

 さて、今回のご相談の場合、貴社の資格取得支援規程では、貴社と従業員は金銭消費貸借契約書を取り交わした上で、従業員が在籍要件を満たさなかった場合には、その従業員には資格取得費用の返還義務があるとされ、また、一定期間の勤務を条件にその全額の返済を免除することが予定されていることから、貴社が(最初に)支払った資格取得費用は、債務免除の条件が付された(従業員に対する)貸付金であると解するのが相当であると考えられます。

 上記の内容を総合的に勘案しますと、ご相談の資格取得費用は、貴社が最初にその費用を支払った時点においては貸付金であり、その支払日の属する事業年度の損金の額に算入することはできず、従業員が勤務要件を満たしてその全額の返済が免除された場合には、その免除された日の属する事業年度の損金の額に算入することになるものと考えられます。

[参考]
法法22、国税不服審判所平成25年3月18日裁決など

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
 本情報の転載および著作権法に定められた条件以外の複製等を禁じます。

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